ベンチャー企業がシードステージにおいて知っておくべき株式のルール・法律

当たり前のことですが、ベンチャー企業のみならず、株式会社にとって「株式」は非常に重要な存在です。
株式の発行が資金調達になりますし、株式に付与される議決権は経営の方向性を左右することにもなります。

また、株主の存在は会社運営の具体的方法にも影響しますし、コンプライアンスの問題から株式や株主はきちんと管理・運用されていなければなりません。

ここでは特にシードステージにあるベンチャー企業が知っておくべきこと、株式に関する法律やルールを解説していきますので、最低限知っていなければならない知識として把握していきましょう。

目次

シード期でのポイント①:議決権の割合に対する権利の内容

どの成長ステージであろうと、株式のシェアと決議要件の関係は知っておくべき知識です。

株式会社である以上、会社法という法律でそのルールが定められていますので、一定の範囲を超えてこのルールを変えることはできません。特に経営者側が有利になるようなルールの変更については基本的にできません。

そこで、シードステージでする増資など、株式の発行がその後も長く経営に影響を与えてしまうおそれがあるのです。
例えば創業者同士のシェアが問題となることもありますし、第三者割当に関しても当然注意しなければなりません。

まずは、「どれだけの議決権を持つことで、どのような権利を得ることになるのか」を把握し、議決権のシェアがいかに重要であるかを理解しなければなりません。

権利が行使できるようになる基準

株主といっても、あらゆる権利が行使できるわけではありません。事業がなかなか前に進まず、かえって株主のためになりません。

そこで、一定の権利に関しては、一定以上の株式・議決権を得た場合にだけ行使が認められます。

例えば株主総会の普通決議には「過半数」の同意が得られなければなりません。
普通決議で決められる内容としては「取締役の選任や解任」「取締役および監査役の報酬の決定」などが含まれます。
よって、何も考えずある人物、あるグループに過半数の議決権を与えてしまうと、会社経営を担う取締役の選任権を与えることになってしまうのです。
そのため過半数というのは非常に重要な分かれ目となるのです。

さらに、2/3以上もの議決権を与えてしまった場合には、特別決議もできてしまいます
役員の選任はもちろん、会社の根本原則である定款の変更、特定の第三者に対する株式の割当も可能です。事業譲渡や合併などもできてしまい、実質その会社の支配者として振る舞うことができてしまいます。

これを裏返すと、過半数にも満たないシェアだとしても1/3を超えているのであれば、多数派でも特別決議による決定事項を強行決定することはできないという意味になります。

他にも、1%以上のシェアで「総会検査役選任請求権」ができますし、
3%以上で「会計帳簿閲覧権」、
10%以上で「会社解散請求権」を行使できます。
決定できるわけではありませんが、請求を受けた会社はこれに対応していかなければなりません。

なお総会検査役とは、株主総会の手続きや決議を調査する者のことで、裁判所が選任を行います。

会社解散請求についてはさらに、「業務の執行が著しく困難となり、回復できない損害が生じている、またはそのおそれがあるとき」であって、さらに「財産の管理や処分が著しく失当で、会社の存立を危うくするとき」に可能なものです。すぐに解散を迫られるわけではありません。

創業者間でのシェア

創業者は互いに仲間内であるためあまり意識する必要がないようにも思えますが、後々方向性が異なることからトラブルに発展し、仲違いすることも珍しくありません。特にシードステージは事業のコンセプトなどを策定する段階にあり、戦略を練る過程で、想定していた方向性に修正が加えられることも十分に考えられます。

そこで、創業者間のシェアは均等に半分、1/3といった形にしないことが大切です。

大事なのは中心人物が多数を有し、意見が分かれたときでも決定権の所在がぶれないようにするということです。できるだけ中心人物はその後の成長ステージにおいて資金調達を得た後でも過半数を維持したほうが良いでしょう。

シード期でのポイント②:種類株式の内容

資金調達の基本的な手法は「借り入れ」と「増資」です。

そして増資に関しては、種類株式の知識があるとバリエーションを増やすことができます。

株式の新たな発行は上で説明したように議決権割合の問題から敬遠されることもありますが、種類株式も活用して適切に運用すればこうした心配をすることなく資金調達ができます。

以下のような種類株式があります。

  • 優先株式
  • 議決権制限株式
  • 取得請求権付株式
  • 取得条項付株式

特に議決権制限株式は経営権の安定に有効です。議決権を付与しないためです。ただし、議決権に制限のない株式よりも調達のハードルは少し高くなってしまいます。

そこで工夫が必要になります。特にシードステージでは金融機関からの融資を受けるのが難しいため、種類株式の性質を活かして、議決権は確保しつつ増資を図ることが大事なのです。

例えば、議決権制限株式と優先株式、2つの特性を持つ株式の発行です。単に議決権を剥奪しただけの株式だと投資家にとってうまみがありません。そこで優先株式として配当での利益を与え、積極的な出資を促すのです。

経営者は議決権割合を維持でき、出資者は出資の見返りを強く受けることができ、互いにwin-winの関係を築くことができます。ただし、その程度についてはよく考えて設定しなければならず、専門家のサポートも得て決定すべきでしょう。

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