ベンチャー企業と大企業のM&A事例を紹介

M&Aは、対象となる企業や事業内容、規模、スキームによって在り方が異なります。

ここではそのうちベンチャー企業と大企業によるM&Aの事例を取り上げ、買収する大企業側の事情、買収されるベンチャー企業側の事情、M&Aまでの流れを簡単に紹介していきます。

目次

M&A事例1:大和ハウス工業による買収

2007年に設立された株式会社ロイヤルゲートは、2018年に大和ハウス工業によりM&A(買収)され、子会社化しています。

大和ハウス工業の狙いは、これまで培ってきた4万件以上の店舗建築の実績、テナント企業とのリレーションを活かして「キャッシュレス対応の店舗拡大・加盟店のIC化対応」することにありました。この課題をクリアするため、優れたキャッシュレス決済サービスを展開していたロイヤルゲートを子会社化したとされています。

政府も安全なキャッシュレス社会の構築に向けた政策を進めており、ロイヤルゲートが開発しているような安全な決済サービスのスピーディな市場展開、ここへのニーズが高くあったのです。そこでロイヤルゲートも、多くの実績と幅広い企業とのリレーションを持つ大和ハウスグループとのシナジーを見込み、M&Aに至ったのです。

M&A事例2:KDDIによる買収

2014年に設立されたソラコムが、2017年にKDDI株式会社に買収され、子会社化しています。ソラコムは通信プラットフォームを提供していた企業で、IoTにおけるリーディングカンパニーとされていました。2016年には数十億円もの資金調達を実施しています。

ソラコムが提供するサービスではリーズナブルでかつセキュアなIoTシステムが導入・運用でき、多くの国で利用可能になっています。

KDDIも15年以上のIoTの提供実績を持っており、更なるIoT拡大に向けて両社はM&Aを実施。KDDIのIoTビジネス基盤にソラコムの通信プラットフォームを連携させ、これまでに培った知見や顧客基盤を活用することで新たなIoTビジネスを狙っています。

なお、KDDIは2015年にルクサも買収しています。

ルクサは2010に年設立された企業で、実績が豊富なバイヤーが厳選した商品を、時間や数量を限定して顧客に提供するという活動をしていました。KDDIはM&Aに先立って2013年からルクサに出資をしており、業務提携も推進していました。その後、これまで以上に両者の資産を活用し、より良いショッピング体験を実現するため、M&Aが実施されています。

M&A事例3:パーソルキャリアによる買収

人材業界のリーディングカンパニーであるパーソルキャリアは、採用意欲の高い企業と転職希望者についてより理解を深めること、両ニーズをこれまで以上に満たすための支援を実施するため、人材分析に強みを持つシングラーとM&Aを実施しました。

シングラーは2016年に設立された企業で、パーソルキャリアの子会社になったのは2018年のことです。M&Aにより、人材サービス事業における協業が開始されました。

M&A事例4:DeNAによる2社の買収

2013年設立のiemo、2012年に設立のペロリ、この両社をDeNAが2014年に買収し、子会社化しています。

この2社の強みを最大化するため、各種プラットフォームでの相互送客、ノウハウの共有を行い、数年かけプラットフォーム全体で月間アクティブユーザー5,000万人を目指すと示されています。

さらに、新しいビジネスモデルを生み出すことで既存リアル産業の事業構造を変えるデジタルイノベーションも狙っています。これにより各業界の消費者の選択肢を広げ、より豊かで便利な生活の実現も目指しています。

M&A事例5:Z会グループによる買収

Z会グループは通信教育をメインに、書籍や模擬試験など、幅広い教育サービスを提供していました。しかし近年、急激に「EdTech」(教育とテクノロジーをかけあわせ、イノベーションを起こすビジネスやサービスのこと)が伸びていることから、同分野への展開にも注力しています。

他方で、2012年に設立された企業アオイゼミも教育格差ゼロを目指して様々なオンライン学習塾サービス等を提供していました。そこでZ会グループは、自らが持つ高品質のコンテンツおよび講師陣などとかけあわせ、オンラインとオフライン両方を強化し、さらに高いレベルでの教育サービスの展開を狙いとして2017年にM&Aを実施しました。

M&A事例6:サイバーエージェントによる買収

2014年に設立されたベンチャー企業Coupeは、「個人を輝かせる」というビジョンを掲げ、美容師と、ヘアカタログなどに掲載されるサロンモデルとのマッチングを行うWebサービスを展開していました。また、インフルエンサー(インスタグラマー、TikToker、ライバーなど)のマネジメントサービスも展開。

サイバーエージェントは2019年にCoupeの株式の一部譲り受けと第三者割当増資を引き受け、今後Coupeとサイバーエージェントグループとの事業のシナジーを図り事業拡大を図るとしています。

M&A(買収)もベンチャー企業にとっての有効なイグジットの手法となり得る

ここで紹介した事例はすべてベンチャー企業と大企業によるM&Aです。M&A、とりわけ買収に対しては消極的な姿勢を持つ企業も多いですが、M&Aも上手く実施することで双方に大きなメリットをもたらします。

なお、M&Aにおいてベンチャー企業に求められること、大企業側のニーズに関してはこちらの記事でも紹介しています。

M&Aの基本的なプロセスについてはこちらの記事で紹介しています。

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