【IPO】レイター期のベンチャー企業経営者が資本政策で考えるべきこと

ベンチャー企業の事業が安定する段階にまで成長したとき(レイターステージ、レイター期)、EXITの1つとしてIPOを検討することもあるでしょう。

IPOを果たすためには、証券取引所が設定する基準のクリアが少なくとも必要ですが、IPOの過程では「資本政策」を策定することになります。

そこでこの記事では、資本政策とは何か資本政策策定にあたってベンチャー企業の経営者がすべき具体的なこととは何か、を解説していきます。

目次

IPOに向けた資本政策とは

資本政策」とは、事業の展開にあたって活用する企業の資本に関する政策のことで、株式発行等による資金調達の計画などを指します。

特にIPOに向けては、主に、安定株主の議決権割合の確保を図りつつ資金調達の方法・時期の調整をし、役員および従業員に対するインセンティブの付与を検討していきます。

資本政策の策定時期としては、VCから出資を受けるとき、役員・従業員等にインセンティブを与えてモチベーションを向上させたいとき、などがあります。
VCに示すために策定する意図としては、出資の打診において事業の将来性を示し、その実現可能性等を確認してもらうことにあります。

専門家との連携による策定が大事

資本政策の策定においては、会社法や税法、金融商品取引法、さらに上場審査基準の内容やその他様々な法令やルールを知っておかなければなりません。

そのため経営者が独力でこれを策定することは難しく、弁護士や税理士、公認会計士、IPOコンサル会社等のサポートを得ることが大切です。

しかしながら、専門家への丸投げをすべきではありません。あくまで「連携」の姿勢が大事で、経営者も主体的に取り組まなければ後々大きなトラブルが生じる可能性もあります。

なぜなら、専門家の目線と経営者の目線は異なっており、それぞれ目指すところが違っている可能性があるからです。

例えば、VCの立場からは、低い株価で株式を取得するような資本政策を望むことがあります。

また、IPOコンサルの場合は、企業価値が将来向上することを期待し、報酬として株式を求めることがあります。
しかし、経営者としては経営権を守るために安定株主の議決権割合を確保したいと考えることも多く、それぞれの立場から資本政策の考え方が異なるケースがあるのです。

この点、留意して専門家の利用をしなければなりません。

資本政策において経営者自身が決定すべきこと

上のように、資本政策の策定にあたって専門家の力は不可欠ですが、一定の事項については経営者自身が決定すべきです。

以下でその例を3つ挙げます。

資本政策の重要事項1:安定株主の議決権割合

第三者の介入割合が大きくなると経営が不安定になるおそれがあります。

そこで、経営者の方は、経営者本人やその家族等、その他取締役などの役員、金融機関などの安定株主に一定以上の議決権が集まるようにすることが大切です。

ただ、議決権割合が大きすぎると資金調達やインセンティブプランの観点で問題が生じますので、経営権とのバランスを考慮しつつ割合を決定していきましょう。

強い安定を実現するのであれば議決権の2/3以上の保有が必要ですが、バランスを取って過半数にするのも良いでしょう。

資本政策の重要事項2:資金調達の程度と手段

IPOを視野に入れた資金調達では、いくら調達する必要があるのか、また、どのような手段で調達するのか、をよく考えなくてはなりません。

上で説明したように安定株主の割合を維持したいのであれば新株発行ではなく融資等で調達することが必要です。
一方で、業績が好調で株価が高くなっている状態で、より大きな資金調達を実現するのであれば新株発行も必要でしょう。

なお、取引先からの出資を受ける際には、現在の関係性が良好でも要注意です。関係が悪化したときに株式の買い取りを求められることがありますので、そのリスクも考慮し、株式の買い取り先もあらかじめ想定すべきです。

主な買い取りパターンとしては以下3つが挙げられます。

  • 自己株式としての買い取り
    会社に取得財源が必要
    自己株式は第三者割当増資の財源などとして利用する
  • 第三者に買い取ってもらう
    当該第三者の選定が重要
    将来にわたり安定株主であることが大切
  • 経営者による買い取り
    経営者が多額の借金を背負う可能性がある

資本政策の重要事項3:創業者利益の大きさやタイミング

創業者が保有していた株式を売却すれば大きな利益が得られます。
これが「創業者利益」です。

創業者は、この利益をいつ得るのか、どれほど得たいのか、資本政策の段階で検討すべきです。

ただし、自身の株式を売却するタイミングには要注意です。

インサイダー取引に抵触しないようにしなければならず、そうすると、IPO、取引市場変更、株式処分信託利用のタイミングなどに限られてしまいます。


なお、経営者自身のみならず、ここまで企業を成長させてきた役員や従業員にも利益を与えたいと考えることもあるでしょう。

その場合、インセンティブプランとして、誰に、どのようなインセンティブを付与するのか検討しましょう。

ただし、安定株主の議決割合低下や、インセンティブ与え過ぎによる労働意欲の低下、一部従業員への付与による他従業員のモチベーションの低下等には要注意です。

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