発起設立と募集設立の比較|会社設立手続の種類

株式会社を立ち上げるとき、「発起設立」とするのか「募集設立」とするのか、いずれかの道に進むこととなります。そこで、それぞれの設立方法がどのような内容なのか、手続にどのような違いがあるのか、この記事で解説していきます。

目次

発起設立とは

発起設立とは、「発起人のみでする会社設立」のことです。多くの中小企業は発起設立により立ち上げられており、後述の募集設立に比べて低コスト・手続が簡単という特徴を持ちます。

自分1人で起業する場合はもちろん、家族や友人、知人などが発起人となり一緒に起業するときには発起設立となります。

そのため発起人だけで立ち上げるといっても、複数人で起業するときには発起設立にならないというわけではありません。

そこで“発起人とは何か”について理解しておく必要があります。

発起人とは会社設立を主導する人物のことですが、厳密には、「定款に発起人として署名または記名押印をした者」であると定義できます(電子署名でもOK)。

発起人になるのに特別な資格は必要なく、制限行為能力者であっても良いですし、法人が発起人になることも可能です。発起人の人数にも制限はありません。

募集設立とは

募集設立は「発起人以外も手続に参画する会社設立」を指します。

設立段階から会社成立後の株主となる者の募集を行い、その引受人らと発起人が一緒になって様々な事項を検討していくことになります。

募集に係る手間やコストがかかりますが、出資してくれる人を発起人以外からも集めることで創業後すぐに大きな資力を得ることが叶います。

発起設立と募集設立で共通の会社設立手続

発起設立でも募集設立でも、大きな流れは同じです。以下の手順に沿って、定款の作成や出資の履行、役員の選任、設立登記を行います。

  1. 発起人による定款の作成
  2. 公証人の認証を受ける
  3. 設立時発行株式に関する事項の決定
  4. 発起人による設立時発行株式の引受
  5. 発起人による出資の履行
  6. 設立時取締役等の選任
  7. 設立登記

また、必要に応じて設立登記の前に変態設立事項についての検査役の調査を行うケースもあります。

変態設立事項、その他定款への記載事項についてはこちらの記事で解説しています。

発起設立と募集設立で異なる会社設立手続

全体の流れは上の通り共通しているものの、以下の事項につき発起設立と募集設立とでは手続方法が異なっています。

定款の記載事項の定め方と変更の方法

定款の記載事項のすべてにつき定め方が異なるわけではありません。

しかし絶対的記載事項の1つである“発行可能株式総数”については原始定款に定めることが求められておらず、その場合には会社成立までに定めなければならない旨法定されています。
そしてその場合の定め方に関して、「発起設立では発起人全員の同意」「募集設立では創立総会決議」が必要とされているのです。募集設立だと、発起人のみの判断だけでなく設立時募集株式の引受人の意見も反映させなければなりません。

また、いったん公証人の認証を受けた定款は自由に変更することができないとされています。特に発起設立だと一定の事項につき裁判所の決定を受けているといった場面などに限られています。しかしながら募集設立だと創立総会の決議を経ているのであれば変更ができるとされています。

設立時募集株式に係る手続は募集設立でのみ必要

募集設立では発起人以外の設立時募集株式の引受人を募集することになります。その通知、申込み、割当てといった作業も発起設立では必要のないものです。

まずは、発起人全員の同意をもとに以下の事項を定めていきます。

  • 設立時募集株式の数
  • 払込金額
  • 払込期日または期間
  • 所定の日までに設立登記が行われないとき、引受けの取消しができることとするなら、その旨と日程

そして申込みを受けた発起人は、各自に割り当てる設立時募集株式の数を定めなくてはなりません。その数などについては発起人が自由に定めることができます。

設立時取締役等の選任

発起設立の場合、設立時取締役等については発起人が定めます。発起人の引き受ける株式数に基づき、「発起人の議決権の過半数」により決せられます。あるいは、原始定款に設立時取締役等を定め、直接選任とすることもできます。この場合、出資の履行が完了したときに選任されたものとみなされます。

他方、募集設立では創立総会により選任を行うのが原則です。ただ、定款により直接選任とすることも可能と考えられています。

設立経過調査の通知・報告方法

設立時取締役(と、設立時監査役が選任されたときはその者)は、選任後遅滞なく一定の事項につき調査を行わなければなりません。というのも、設立時取締役の仕事は主に発起人の監査であり、会社が成立するまでの執行機関は発起人です。会社成立後の一般的な取締役の仕事と混同しないようにしましょう。

なお、調査事項の例は以下の通りです。

  • 現物出資された財産が申告された通りの価額であるかどうか
  • 出資の履行が完了しているのかどうか
  • 設立手続が適法に行われているかどうか
  • 定款に抵触していないかどうか

調査は発起設立であっても行われます。

しかし、調査結果の通知先・報告先が異なります。発起設立では、調査を行った設立時取締役等は“発起人に対し通知する”と定められています

他方、募集設立では“創立総会に報告する”と定められています

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