知っておくべき労務管理の基礎|具体的な業務内容・企業がすべき手続内容

企業が従業員を雇って適法に企業活動を続けていくためには「労務管理」についての知識を持っていなければなりません。

そこで、この記事で労務管理に関する基礎知識、具体的な業務内容、そして起業後新たに従業員を雇用した場合などに必要となる手続内容についても解説していきます。

目次

労務管理とは

企業はヒト・モノ・カネの三大要素から構成されています。

1人会社であるなど極端に小規模な企業でなければ従業員がいるかと思われます。この従業員は三大要素のうちのヒトに該当し、企業としてはこの社内の人材に関するマネジメントをしなければならず、このことを「労務管理」と呼んでいます。

簡単に言いかえると、「従業員の労働に関わる事務」と表現することもできます。

労務管理により人材の有効活用が実現され、生産性の向上・利益の増大といったことにも繋がりますが、それ以前に法律上の義務付けがされているマネジメントであることを忘れてはいけません。

労務管理に含まれる主な業務内容

労務管理の具体的な業務内容を挙げていきますが、そのすべてを自社完結しないといけないわけではありません。実際、労務管理を社労士等の専門家にアウトソーシングしている企業も少なくありません。

労働契約の締結

契約は口頭でも成立するものですが、通常はトラブルを避けるために文書で契約を交わします。

特に労働契約の締結にあたって重要なのは“労働条件を通知する”ということです。
労働基準法でも、一定の労働条件については明示的に通知することが義務付けられています。
例えば「労働契約の期間」「就業場所」「従事する業務内容」「始業および終業の時刻」「賃金の計算」など他にも多数の事項が規定されています。

社会保険への加入

労働契約を締結し、従業員としての従事を開始することになれば、社会保険の資格取得届出を行います。つまり「健康保険」と「厚生年金保険」への加入手続を行うということです。

こういった対応は正社員のみが対象となるわけではなく、アルバイトやパートも対象となります。社会保険への加入のみならず、近年は雇用形態に関わらず労働内容の実態に合わせた平等な対応を取ることが求められていますので労務管理の基本として覚えておきましょう。

勤怠管理

日々の労働時間の把握は、給与計算をするためにも欠かせません。

勤怠管理の実施はそのための前提となります。そこで始業時間と終業時間、そして休憩時間や休日、年次有給休暇などを記録していきます。

記録方法・管理方法については、厚生労働省が示す一定水準を満たす形で実施されなければなりません。
一般に提供されている労務管理システムの利用やタイムカード等の利用をすれば基本的には問題ないでしょう。その他きちんと管理ができていれば従業員による自己申告制を採用してもかまいません。

給与計算

勤怠管理と連動して給与計算も進めていきます。

毎月同額の項目もありますが、変動する支給分もありますので毎月の計算はミスなく行わなければなりません。

残業手当のみならず、通勤手当や役員報酬などの加算。さらに社会保険料や雇用保険料などの控除項目を減算するなどの計算を要します。

就業規則等の整備

就業規則やその他社内ルールの整備も労務管理の一業務です。

特に就業規則に関しては一定条件下で作成することが法律上の義務とされています。

(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

e-Gov法令検索 労働基準法第89条一部抜粋(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

この条文では「次に掲げる事項について就業規則を作成」とありますが、具体的には始業時刻や終業時刻、賃金など、労働契約を締結するときに通知するものと被っている事項も多くあります。

また、就業規則の作成と届出が必要になるのは常時10人以上を雇う場合とされています。

ただ、従業員数が10人に満たない場合であっても適切な労務管理を行う上では作成しておくことが望ましいです。

作成後は、従業員の過半数代表者、あるいは過半数の加入する労働組合の意見書を添付し、管轄の労働基準監督署に提出します。

さらに作成した就業規則は従業員がその内容を確認できるよう、事業所の見やすい位置に備え置くようにしましょう。こうして周知をしなければ就業規則本来の役割を果たすことができません。

企業が雇入れをするときに取るべき対応

従業員の雇入れをした場合、上述の通り健康保険や厚生年金保険などの社会保険関係の加入手続を進めなくてはなりません。労災保険や雇用保険といった労働保険関係についても同様です。

これらの手続についてこちらのページで解説していますのでご参照ください。

さらに、労務管理のためには「法定三帳簿」の整備も欠かせません。労働者名簿・賃金台帳・出勤簿等の整備は労働基準法にて義務付けられています。

法定三帳簿に関してはこちらのページをご参照ください。

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