【未払賃金立替払制度】企業も知っておくべき従業員のための立替え制度!

昨今、新型コロナウイルスの流行により倒産をする企業も増えていますが、賃金が未払いのまま倒産をしてしまうとどうなるのかご存知でしょうか。企業で従業員の賃金に関する事務を担当している方や経営者は、従業員が困ることのないよう、必要に応じて当該制度の案内をしてあげると良いでしょう。

目次

未払賃金立替払制度とは

一般的には企業が破産などをする場合、従業員に事前の通知はありません。場を混乱させてしまい、業務が滞ってしまうからです。また、情報が漏れることで債権者から取立てをされてしまうなど、財産が散逸してしまうおそれも生じます。

しかし従業員が何ら知らされることなく突然破産等をした場合、前賃金が支払われてからの分が未払いになってしまいます。

原則として破産後、企業の財産は破産財団となり経営者であっても勝手に処分ができず、優先はされるものの未払い賃金が満足に支払われるとは限りません。そこで役立つのが「未払賃金立替払制度」です。こういった倒産の場面において、労働者の保護を図るべく未払い賃金の一部を国が立て替えて払ってくれるという制度です。

未払賃金立替払制度の条件について

立替払いの対象者となるには、「倒産の6ヶ月前から2年」の間に退職した者でなければなりません。つまり、倒産より1年前に退職した者は対象外ですし、倒産の6ヶ月前から起算して3年後に退職した者も対象外です。

以下でもう少し詳しく適用対象や条件等を見ていきましょう。

未払賃金立替払制度の必要書類

当該制度の適用を受けるには届出が必要です。未払い賃金があっても自動的に立替をしてくれるわけではありません。

必要書類として必須なのは「未払賃金の立替払請求書」です。独立行政法人労働者健康安全機構のホームページからダウンロードできます。

また必要に応じて他の書類も準備しなくてはなりません。ゆうちょ銀行への振込を指定するのであれば預金通帳の写しを添付しなければなりませんし、従業員の方が外国人であれば「在留カード」および「パスポートの写し」を添付しなければなりません。

退職金は対象になる?

退職金が未払いのまま倒産してしまうケースもあるでしょう。退職金に関してもこの制度の対象になっていますので、立替払いをしてもらうことは可能です。

この制度で対象となる「未払い賃金」として定められているのは、「定期賃金」と「退職金」だからです。退職金は例外扱いでもありませんし、きちんと請求をすることで振り込みが期待されます。

逆に、ボーナスのような臨時の賃金、解雇予告手当、年末調整の還付金などは含まれないため注意しましょう。

バイト代は対象になる?

アルバイトやパートタイマーに関して、この制度の対象になるのかどうか、厚生労働省のホームページで答えが記載されています。

結論からいうと、バイトであっても対象に含まれます。当該制度では正規雇用・非正規雇用を区別していないからです。正社員であろうとなかろうと関係はありません。ただし「労働者」でなくてはなりませんので、役員報酬を受けていた役員は対象外です。

コロナが理由で倒産しても認められる?

当該制度は企業が倒産したときなどに備えた、セーフティーネットとして設けられています。そのため新型コロナウイルスの影響を受けて倒産に追い込まれてしまったケースでも問題なく利用できます。

なおここで「倒産」について簡単に整理しておきますが、倒産には破産や民事再生などといった「法律上の倒産」と、「事実上の倒産」があります。後者は法的な手続を経ていないものの、もはや事業活動の再開の余地がなく、支払能力がないとして認定された場合を指します。

そのため倒産の理由は問われませんが、単に支払いが厳しくなってきたというだけではこの制度は利用できません。

いつ振り込まれるのか

従業員の経済状況によっては振り込み時期も重要になるでしょう。そのため請求から支払いまでの期間も把握しておくことが大事です。

この点、運営組織である労働者健康安全機構で以下のように説明がなされています。

立替払金の支払については、請求書に記入漏れや記入誤りなどがなければ、 請求書を受け付けてから30日以内にお支払いするように努めています。しかしながら、記載内容の補正や提出書類の追加などが必要な場合は、それ以上の時間がかかることもあります。
立替払請求書を送付してから1か月半以上経過しても支払通知書が届かない場合には、お問い合わせください。

https://www.johas.go.jp/chinginengo/miharai/tabid/692/Default.aspx

つまり請求者側のミスがなければ基本的には30日内、不備があると1ヶ月以上かかることもある、ということです。

立替払いされた賃金は課税対象になるのか

賃金は課税されるのが原則ですが、当該制度により立替えられた金銭には税金がかかるのでしょうか。労働者健康安全機構の回答を見てみましょう。

労働者が未払賃金立替払制度により弁済を受けた額は、定期賃金分、退職手当分を問わず原則としてすべて退職所得として課税されます (租税特別措置法第29条の4)。
もっとも、退職所得控除が認められることにより、申告すれば実質的に非課税となる場合が多いものと思われます。

https://www.johas.go.jp/chinginengo/miharai/tabid/692/Default.aspx

つまり課税対象になるという扱いは一般的な賃金と変わるところはないものの、控除が認められることで実質税金がかからないケースがある、とされています。ただし控除を受けるためには書類に必要事項を記載しなければならず、記載がされていない場合、支払金額の約20%が源泉徴収されますので注意しましょう。

未払賃金立替払制度の存在を従業員に周知させよう

倒産をした場合、債権者との問題のみならず、未払い賃金を争って従業員とトラブルになることもあります。そこで制度について周知させ、争いが長期化しないように努めましょう。

なお、すでに賃金の未払いをしてしまっている企業はこちらの記事も参考にしてください。

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