【まとめ】中部カラー事件から見る-就業規則変更の2つのポイント

就業規則とは会社のルールブックで、従業員が10名以上いる場合は必ず作成しなくてはいけません。

しかし、作成しても誰も見ることができなかったり、存在すら知らないでは意味がありません。

そこで、就業規則は誰でも見ることができるようにする必要があります。

”誰でも”とは字のとおり、正社員だけでなくアルバイト・パート、時短勤務者など、その会社に務める全ての人を指します。

この誰でも見ることができる状態、すなわち

「周知」

が徹底されていないと、就業規則の効力がなくなってしまうんです。

中部カラー事件

(東京高裁 平成19年10月30日判決)

【主張】

Aさんは退職後、勤めていたX社が退職金を減額する旨の就業規則変更は無効だと主張し、変更前との差額の支払いを要求した。

【経緯】

・就業規則を変更した理由は、情勢が深刻で資産運用がうまくいかず、積み立て金額が不足したことにあった。

・X社は就業規則変更にあたり、経営会議および全体朝礼にて説明を行い、全従業員は異議がない旨の書面を提出した。

・就業規則変更の手続きが全て完了してから3ヶ月後、Aさんは28年間勤めたX社を退職した。

【判決】

就業規則の不利益変更は実質的周知を欠いていると判断され、X社に差額分の支払いを命じた。

【なぜ会社は負けたのか?】

❌全体朝礼で議事録を作成せず、説明文書の配布もなかった。

 ➡︎「従業員へ説明する意図がない」と判断

❌説明会を実施していなかった。

 ➡︎全体朝礼での説明のみは不十分と判断

❌退職金額の計算方法等が明記されていなかった

 ➡︎「所定の計算方法による」の記載しかなく、就業規則を見た従業員が自身の退職金額を計算することが実質不可能と判断

【会社はどうすればよかったのか?】

⭕️全体朝礼といった定期的に行っている集会での説明ではなく、就業規則の変更について別途詳細な説明会を開き、議事録を作成し説明資料を配布する。

⭕️変更後の就業規則において、特に変更された項目は詳細に記載する。

以上のように、X社は全従業員に説明して同意書も取得したにもかかわらず、裁判では負けてしまいました。

今回はAさんの結末のみ記載されていますが、恐らくこの件が引き金となって他の従業員も退職金の差額を請求したのではないでしょうか。

そうなってしまっては、本来削減できたはずのコストが削減されず、対応に時間を取られてしまい、トータルコストはマイナスになってしまいます。

会社のコストを適法に削減しつつ、従業員が裁判を起こすような事態にならないよう、就業規則の変更、特に従業員に少しでも不利益になる場合は、

慎重すぎるくらい説明を行なってその記録を残し

誠意を持って対応することを心がけましょう

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